独立行政法人 地域医療機能推進機構

パンフレット

診療分野の幅を広げる絶好の機会となる離島経験

 この度、私はJCHOグループによる離島の医療支援の第一号として、2014年4月から9月まで伊豆諸島の新島に派遣されました。2014年11月現在は、東京山手メディカルセンターの医師が後任として新島での診療業務に当たっています。数多くのJCHOグループ病院の中には、離島医療に関心をお持ちの先生も多いことでしょう。しかし、内情がわからないため、離島での診療業務に二の足を踏んでいる方もいるかと思います。そんな方々の動機付けと不安解消ために、少しですが私の体験を紹介させていただきます。

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 離島での業務は多岐に及びますが、新島の場合、医師3名が常駐しており、大きく外来、救急対応、血液透析の3つに分けられます。当番で、医師3名のうち2名が外来、1名が透析を担当します。

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 派遣に携わるのは、主に内科の先生が中心だと思いますが、島では一般的な内科疾患のほかにも様々な症例を診ることになります。内訳は、内科6割、他科4割という印象です。島で発生した疾患や外傷患者の殆どは、少なくとも一度は当診療所を受診し、我々で初期対応を行うことになります。内科以外の疾患としては整形、小児が多く、他に皮膚科、精神科、眼科、耳鼻科などが主に来院します。ざっと例を挙げさせていただくと、整形関連は、整形外科のブロック注射、関節注射、肘内障の整復、骨折の整復固定など、小児関連は、小児の発熱や皮疹など、その他、皮膚科的な小手術、褥瘡の処置、巻き爪の処置、イボの焼灼、釣り針の除去、ムカデを始めとする虫刺され、角膜異物の除去など多岐に及びます。

 しばしば、緊急性、重症度に応じて、島内患者宅への緊急往診、ヘリコプターによる重症患者の高度医療機関への緊急搬送も行います。そのほか、老人ホームへの定期往診、学校保育園検診、妊婦健診、在宅終末期医療など、地域医療に関わることはなんでも行います。

 自分の専門分野以外を診ることについて、不安を抱かれる先生も多いと思いますが、バックアップ体制は整っています。まず、地域医療を行うため、あらゆる診療科のスキルを身につけた自治医大出身の所長に、わからないことは常時教わることができます。上記のほかにも、胃カメラや咽頭ファイバースコープ、エコー検査など、色々な科の手技を覚える機会に恵まれます。

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 上述の如くスタッフはJCHO医師を含めて3人いますが、いずれも医歴が5-9年目ほどの若手が中心なので、比較的気軽に相談できます。また、年に数回、整形、皮膚科、眼科などの各専門科医師が週末に診療を行っており、そちらへの紹介も可能です。このほかにも、都立広尾病院をはじめとする都立病院が、症例のコンサルトや島で撮影したCTやレントゲンの遠隔画像診断に対応してくれます。新島は、東京都の離島の中では比較的アクセスが良いため、ヘリ搬送未満の準緊急症例の内地受診のハードルも低めです。2014年度は透析技師が不在だったため、穿刺から透析中のトラブル対応、返血、透析条件の設定など医師にも負担がかかりましたが、2015年4月以降は透析技師が常駐することが決まっており、負担も軽減すると思われます。

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 当診療所は、島で唯一の医療機関であるため、都会の大病院ではリスク管理の意味でも行うことの少ない専門外の診療についても、専門科の意見を聞きながら、実際に自らの手で実践できる環境があります。特に、将来開業を志している先生にとっては、診療分野の幅を広げる絶好の機会になると考えます。離島という閉ざされた環境ながら、出自のさまざまな医師が集まる場所でもあるため、他施設の考え方に触れることができたことも、個人的には良い経験になりました。また新島の場合は、宿舎などの現地での職場環境も整備されており、待遇面に関しては十分配慮されておりました。

 離島医療への参加を今後も続けていくことは、地域医療への貢献を掲げるJCHOのミッションの実践として、また、JCHOに勤務する医師に経験の場を提供する意味でも、大変意義深いことだと考えます。新島派遣事業に関心のある方がおられましたら、ご相談ください。