独立行政法人 地域医療機能推進機構

パンフレット

独立行政法人地域医療機能推進機構中期目標

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独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)第29条第1項の規定に基づき、独立行政法人地域医療機能推進機構(以下「地域医療機構」

1項の規定に基づき、独立行政法人地域医療機能推進機構(以下「JCHO」という。)が達成すべき業務運営に関する目標(以下「中期目標」という。)を次のとおり定める。

2024年(令和6年)2月27

厚生労働大臣 武 見 敬 三

第1 政策体系における法人の位置付け及び役割

1 法人の使命

JCHOは、病院、介護老人保健施設(以下「老健施設」という。)等の運営を行い、救急医療、災害時における医療、新興感染症発生・まん延時における医療、へき地医療、周産期医療、小児医療、リハビリテーションその他地域において必要とされる医療及び介護を提供する機能の確保を図り、もって公衆衛生の向上・増進や住民福祉の増進に寄与することを目的としており、全国に病院を展開し、法人全体として高度急性期から慢性期までの幅広い医療機能を有するとともに、約半数の病院に老健施設が併設されているという特長がある。

JCHOにおいては、これらの特長を生かし、病院の所在する地域の医療関係者等と連携し、5疾病※16事業※2、リハビリテーション、在宅医療、その他当該地域において必要とされる医療及び介護を相互補完しながら提供していくことが求められている。

※1 5疾病・・・がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病及び精神疾患

※2 6事業・・・救急、災害時における医療、新興感染症発生・まん延時における医療、

へき地の医療、周産期医療及び小児医療(小児救急医療を含む。)

2 現状と課題

今後、更なる高齢者の増加と生産年齢人口の急激な減少が見込まれる中で、地域によって大きく異なる医療・介護ニーズや医療人材等の活用可能な資源の状況を踏まえつつ、介護分野を含めた機能分化と連携、人材確保等の取組を一層促進することにより、地域住民に対し、良質な医療・ケアを効果的・効率的に提供できるような体制の構築が必要となる。

そのような中で、将来を見据えた医療提供体制を構築するため、地域医療構想の推進、医師等の働き方改革の確実な実施、医師や看護師等におけるタスク・シフト/シェアや医療の担い手不足の解消等に着実に対応していく必要がある。

また、単身や高齢者のみの世帯の更なる増加が予想されており、それぞれの地域社会の実情に合わせた柔軟なサービスの提供によって、医療ニーズの高い要介護者を含めた要介護高齢者が在宅で生活できるよう、地域の拠点となる在宅サービス基盤の整備と機能強化が求められている。

さらに、国民目線での医療・介護サービスの提供体制を整備するに当たり、国民一人一人の医療・介護ニーズに的確に対応し、最適な医療・ケアを届けることができるよう、最大限、デジタル技術の活用を図るべきであり、特に医療分野におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)によるサービスの効率化・質の向上を実現することにより、最適な医療・ケアを実現するための基盤整備を進めていく必要がある。

このような将来に向けた課題がある中で、JCHOは、救急医療の実施やへき地等の病院への医師派遣等による地域医療への貢献、医療・介護両方のサービスを提供できる強みを生かした地域包括ケアシステム構築の更なる推進、特定行為を実施する看護師や高度な看護実践能力及びマネジメント能力等を持つ質の高い看護師の育成等によるタスク・シフト/シェアの推進等を着実に実施していく必要がある。

3 法人を取り巻く環境の変化

新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ感染症」という。)の発生以降、医療を取り巻く環境は大きく変化しており、患者や地域住民の受療行動や地域での医療及び介護に対するニーズの変化等を踏まえて、地域で適切な役割を果たすことが求められている。

また、少子高齢化の進行に伴い、今後、生産年齢人口の急激な減少が見込まれる中で、医療・介護分野の人材不足はこれまで以上に厳しくなることが想定される。こうした中で、将来にわたって着実に医療・介護を提供していくために、医療・介護人材の確保・育成を行っていく必要がある。

これらを踏まえて、JCHOは、社会環境や医療・介護ニーズ等の変化に対応し、地域において必要とされる医療及び介護を提供し続けられるよう、第3期中期目標期間中においては、JCHOの様々な資源を最大限有効活用し、業務運営の効率性、自立性及び質の向上も念頭に置き、病院、老健施設等を運営していくものとする。

(別添)「政策体系図」、「一定の事業等のまとまり」及び「JCHOの使命等と目標との関係

第2 中期目標の期間

通則法第29条第2項第1号の中期目標の期間は、2024年(令和6年)4月から2029年(令和11年)3月までの5年間とする。

第3 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項

通則法第29条第2項第2号の国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項は、次のとおりとする。

1 診療事業

(1)良質で効果的・効率的な医療提供体制の推進

効果的・効率的な医療提供体制の推進に当たっては、将来の医療需要の動向を踏まえ、地域医療構想の実現に向け、地域の他の医療機関等との連携を進めていくとともに、地域包括ケアシステムの要として良質な医療を提供する体制の充実・強化に取り組むこと。

① 良質な医療の提供

患者に良質かつ安全・安心な医療を提供するため、医療安全文化の醸成及び医療安全管理体制の一層の充実に取り組むこと。また、多職種間の協働によるチーム医療の実施、病院機能評価等の第三者評価の受審、臨床評価指標の活用等により、各病院における医療の質の更なる向上を図ること。

② 地域の他の医療機関等との連携

JCHO病院の多くが、医療・介護両方のサービスを提供できる強みを生かして、それぞれの地域における医療・介護を提供する機関との連携の中で、求められる役割を確実に果たすよう努めること。

医療資源を重点的に活用する外来や急性期医療を担う病院においては、医療機能の分化・連携に資するため、地域医療支援病院や紹介受診重点医療機関等として、逆紹介や医療機器の共同利用の促進など、一層その機能を発揮するように取り組むこと。

地域に密着した病院では、地域における医療の中心的な提供主体としてプライマリ・ケアを担っているかかりつけ医や地域の在宅療養を支える中心的役割を担っている訪問看護ステーション等との連携・協力を一層推進すること。

また、かかりつけ医機能を発揮する医療機関をはじめ、地域の医療・介護施設との連携に必要な、感染予防や認知症に関する研修を含む、地域の医療・介護従事者向けの研修を実施するなど、地域の他の医療機関等との連携を推進すること。

③ 5疾病・6事業等の実施

新たに都道府県医療計画に追加される新興感染症への対応を含め、これまでJCHOの各病院が取り組んできた救急医療、在宅医療、認知症対策、へき地等の医師不足地域への医師の派遣など5疾病6事業等について、各病院の機能や特性等を踏まえ、地域で求められる役割を確実に果たすよう努めること。

また、大規模災害が発生した場合は、災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第2条第5号に基づく内閣総理大臣の指定を受けた指定公共機関として、国や自治体と連携し、被災地の実情に応じた持続的な支援を行うこと。

④ 地域におけるリハビリテーションの実施

「医療・介護が必要な状態になっても、自分が住み慣れた地域で暮らし続けたい」という思いに応えるため、自治体と連携するとともに、医療と介護の両方を提供しているJCHOの特長を生かし、医療・介護の連携により早期に適切なケアプランを策定するなど、地域の実情に応じて急性期から回復期において効果的なリハビリテーションを実施すること。

⑤ 評価における指標

良質で効果的・効率的な医療提供体制の推進に関する評価について、以下の指標を設定する。

(ア)全ての病院が病院機能評価等の第三者評価の認定を受けることとする。

(イ)JCHO全体での逆紹介率を、毎年度増加させるとともに、中期目標期間の最終事業年度までに70.0%以上とする。

(ウ)救急告示病院又は病院群輪番制病院に指定されている病院の救急搬送件数を毎年度、前年度より増加させる。

【指標設定及び指標水準の考え方】

(ア)各病院において医療の質を更に向上させるためには、病院機能評価等の第三者評価の受審や臨床評価指標の活用を通して、院内の体制を絶え間なく改善していく必要があることから、病院機能評価等の第三者評価の認定を良質な医療の提供を測る指標として設定する。

 目標水準については、JCHO病院を利用する全ての患者に良質かつ安全・安心な医療を提供するため、全病院の認定とする。(実績値:令和4年度22病院)

(イ)国が目指す「医療・介護が必要な状態になっても、自分が住み慣れた地域において、『治し・支える』医療が地域で完結して受けられる」姿の実現に向けて、地域の他の医療機関等と連携し、かかりつけ医機能を担っている医療機関等へ患者を戻していくことが重要であることから、逆紹介率を地域の他の医療機関等との連携を測る指標として設定する。

 目標水準については、地域医療支援病院の承認要件のうち、逆紹介率の最も高い水準である70%を参考にしつつ、2019年度(令和元年度)から2022年度(令和4年度)までの実績値を踏まえて、70%以上という水準を設定する。(実績値:令和元年度58.6%、令和2年度62.6%、令和3年度61.0%、令和4年度59.9%)

(ウ)JCHOは全病院が救急告示病院又は病院群輪番制病院に指定されており、救急搬送患者の受入れを積極的に行う必要があるため、救急搬送件数を効果的・効率的な医療提供体制の推進の実績を測る指標として設定する。

目標水準については、毎年度、前年度よりも増加するよう設定する。(実績値:令和元年度90,676件、令和2年度84,965件、令和3年度90,905件、令和4年度97,367件)

【重要度:高】

 JCHOが地域から信頼され、必要とされ続けるために、医療の質の更なる向上を図るとともに、地域の他の医療機関等と連携により「医療・介護が必要な状態になっても、自分が住み慣れた地域において、『治し・支える』医療が地域で完結して受けられる」姿を実現することは厚生労働省の政策目標を達成するためにも重要な取組であるため。

【困難度:高】

 病院機能評価等の第三者評価については、受審に当たり院内の組織や患者サービス等の体制整備やその調整等を病院全体で実施し、質の高い病院運営の実現が求められることから、認定を受けるには相当な努力が必要であるため。

地域の状況や周辺住民の意識等が様々である中で、地域の医療機関との機能分化・連携を図り、逆紹介率を維持・向上させていくことは非常に困難が伴うため。

近年、救急搬送件数は増加傾向にあるが、医師の働き方改革への取組や各病院の救急受入体制の維持といった課題がある中で、毎年度救急搬送件数を増加させることは相当な努力が必要であるため。

(2)予防・健康づくりの推進

地域住民に対し、生活習慣病、ロコモティブシンドローム、やせ、メンタル面の不調の予防といった「誰一人取り残さない」健康づくり、ライフコースアプローチを踏まえた健康づくり等に関する公開講座等を開催することや、各種予防接種を実施することなどにより、地域全体の健康づくりに寄与すること。

また、疾病の早期発見・早期治療に資するため、特定健康診査及び特定保健指導を含む効果的な健康診断の実施に努めること。

○ 評価における指標

予防・健康づくりの推進に関する評価について、以下の指標を設定する。

地域住民への教育・研修の実施回数(JCHOの職員が地域住民等に対して講演や研修等を行った回数。オンラインでの実施を含む。)を毎年度1,000回以上とする。

【指標設定及び指標水準の考え方】

地域住民の主体的な健康の維持増進のためには、研修や公開講座等を定期的に実施することによる地域住民に対する啓発が重要であるため、地域住民への教育・研修の実施回数を予防・健康づくりの推進の実績を測る指標として設定する。

目標水準としては、新型コロナ感染症の影響により、地域住民への教育・研修の実施回数が減少していたが、2022年度(令和4年度)は回復傾向が見られるため、新型コロナ感染症発生以前の2017年度(平成29年度)から2019年度(令和元年度)までの実績値と同等の水準を設定する。(実績値:平成29年度1,080回、平成30年度1,042回、令和元年度1,059回、令和2年度481回、令和3年度408回、令和4年度917回)

2 介護事業

人口構成の変化や介護需要の動向は地域ごとに異なるため、地域の実情に応じた介護ニーズや自事業所の機能を踏まえ、住み慣れた地域において、利用者の尊厳を保持しつつ、必要なサービスが切れ目なく提供できるよう地域包括ケアシステムの推進に取り組むこと。

特に病院の附属施設であり、病院と一体的に運営されているというJCHOの老健施設等の特長を生かした医療と介護の連携を強化し、老健施設における医療ニーズの高い者(喀痰(かくたん)吸引、経管栄養、酸素療法が必要な者等)の受入れや、訪問看護ステーションにおける重症者(在宅での鎮痛療法や化学療法を行っている末期の悪性腫瘍、在宅酸素療法など特別な管理を必要とする者等)の受入れを推進する等、質の高いケアが提供できる体制の充実・強化に取り組むこと。

介護サービスの実施に当たっては、地域住民が、できる限り住み慣れた地域で、これまでの日常生活に近い環境で暮らし続けたいという思いに応えるため、在宅復帰・在宅療養支援の促進や認知症対策及び自宅での介護や看取り等の個別ニーズに寄り添った柔軟かつ多様なサービスが提供できるように努めるとともに、地域包括支援センターにおいて多職種連携により、地域の困難事例の抽出及びその解決に取り組むこと。

また、介護保険制度は2000年(平成12年)に創設されてから20年以上が経過し、地域密着型や複合型等の介護サービスの多様化や介護療養病床から介護医療院への移行等の状況の変化を踏まえ、地域から求められる新たな介護サービスの実施に向けた検討を行うこと。

○ 評価における指標

介護事業に関する評価について、以下の指標を設定する。

訪問看護ステーションの特別管理加算の算定件数について、毎年度10,000件以上とする。

【指標設定及び指標水準の考え方】

訪問看護ステーションについて、地域包括ケアシステムの構築には、在宅療養の場における重症者の受入れや看取りが重要であるため、訪問看護ステーションにおける特別管理加算の算定件数を介護事業の実績を測る指標として設定する。

目標水準については、2021年度(令和3年度)及び2022年度(令和4年度)の実績以上の水準を設定する。(実績値:令和3年度9,911件、令和4年度9,861件)

3 病院等の利用者の視点に立った医療及び介護の提供

利用者が、医療・ケアの内容を理解した上で、自身の治療等を主体的に選択できるよう、相談体制を充実させ、利用者やその家族等への十分な説明、本人が望む医療やケアを前もって考え話し合う人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)を踏まえた対応等、利用者のニーズを的確に把握した上で、利用者の意思を尊重した医療・ケアを実施すること。

良質な医療の提供に向けた医療安全管理及び感染管理の体制整備及び活動の推進を図るため、医療安全に係る報告や、医療関連感染の発生等に関する情報を収集・分析するなど、医療安全及び感染対策の取組の充実を図るとともに、外部評価を活用し、透明性をもった医療の提供に向けて取り組むこと。

JCHOの有する全国ネットワークを活用し、JCHO内における医療安全や感染管理に係る事案や対策等の情報共有により、再発及び発生防止に向けた取組を推進すること。

○ 評価における指標

病院等の利用者の視点に立った医療及び介護の提供に関する評価について、以下の指標を設定する。

(ア)患者満足度調査の「総合評価」の5段階評価において最高評価を5点、最低評価を1点として点数化し、毎年度、平均得点を入院で4.45以上、外来で4.20以上とする。

(イ)老健施設の利用者満足度調査の「総合評価」の5段階評価において最高評価を5点、最低評価を1点として点数化し、毎年度、平均得点を入所4.46以上、通所で4.54以上とする。

(ウ)全ての病院が下記の①②を満たすこととする。

① 実働病床数に対する院内インシデント・アクシデント報告総数を5倍以上とする。

② 全報告数に占める医師からの報告件数の割合を将来的に10%以上とするため、2023年度(令和5年度)実績値よりも、毎年度1%ずつ増加させる。

【指標設定及び指標水準の考え方】

(ア)病院において、患者やその家族の主体的な治療の選択・意思決定を促し、患者のための医療を提供することは、病院に対しての満足度の向上につながるため、患者満足度調査を患者の視点に立った医療の提供の実績を測る指標として設定する。

目標水準については、2019年度(令和元年度)から2023年度(令和5年度)までの実績値の平均を維持するよう水準を設定する。(令和元年度~令和5年度平均値:入院4.45、外来4.20

(イ)老健施設において、利用者やその家族等がサービス内容を理解し、それぞれの意思を尊重した選択の上、適切なサービスが受けられるよう支援することは、利用者の施設に対する満足度の向上につながるため、利用者満足度調査を利用者の視点に立った介護の提供の実績を測る指標として設定する。

目標水準については、2019年度(令和元年度)から2023年度(令和5年度)までの実績値の平均を維持するよう水準を設定する。(令和元年度~令和5年度平均値:入所4.46、通所4.54

(ウ)良質な医療の提供に向けた医療安全管理等の質の向上のため、同様の事案の再発を防止する観点から、各病院で院内における医療安全に関する報告を活性化し、「透明性をもった医療の提供」に取り組む必要があり、院内インシデント報告総数等を満たす病院数を医療安全管理及び感染管理の質の向上の実績を測る指標として設定する。

目標水準については、全ての病院が透明性をもった医療を提供できるよう全病院とする。(実績値:令和4年度20病院)

【重要度:高】

患者等の視点に立ち、主体的な治療の選択・意思決定を促すことで、患者のための医療等を提供し、また、良質な医療の提供に向けた医療安全管理等の質の向上に取り組み、透明性をもった医療を提供することで、医療の質や患者等の満足度の向上に努めることは重要度が高い。

【困難度:高】

患者等のニーズを的確に把握し、患者等の視点に立った医療の提供等により、病院を受診する患者等の満足度を維持・向上し続けることは、相当な努力が必要であるため。

透明性をもった医療を提供するため、全病院の院内のインシデント・アクシデント報告件数を増加させ、かつ全報告件数に占める医師の報告件数を一定割合以上とすることは、全職員に対する周知・徹底等による職員の意識強化や報告しやすい環境づくり等を行う必要があり、非常に困難が伴うため。

4 教育研修事業

JCHOの全国ネットワークを活用した臨床研修プログラムやキャリアパスについて、不断なる見直し等を図ることにより、質の高い職員の確保・育成に努めること。

良質な医療を提供するため、院内での医療安全活動の取組を推進する人材を複数職種で育成するとともに、それらの職種で構成されたチームにより患者及び院内職員の医療安全への理解の促進に努めること。

また、JCHOが担う地域医療の場では、多様な病態に対する基本的な診療能力を備え、患者の初期対応及び管理を適切に行うことができる、地域医療の実践病院で活躍する医師の存在が重要であるため、医療・介護が必要な状況になってもできる限り住み慣れた地域で暮らし続けたいというニーズの増大等を踏まえ、引き続き、総合診療医の育成に努めること。

チーム医療及び在宅医療の推進、新興感染症等の感染拡大時の迅速かつ的確な対応、働き方改革への対応等のため、地域及び各施設のニーズに合った、特定行為を実施する看護師や高度な看護実践能力及びマネジメント能力を持ち、医師など多職種との協働により、チーム医療を積極的に提供できる質の高い看護師の育成に取り組むとともに、特定行為を実施する看護師等が活躍できる環境を整え、タスク・シフト/シェア等を推進すること。

地域の医療・介護の質の向上に貢献するため、かかりつけ医機能を発揮する医療機関をはじめとした地域の医療・介護施設との連携に当たり、必要となる感染予防や認知症に関する研修などの実施により、メディカルスタッフに対する教育や地域の医療・介護従事者に対する教育に取り組むこと。

財政的に自立した運営を目指す中で、病院の各部門が一体となって経営改善に取り組めるよう、自院の現状を正しく理解し経営戦略を立案できる人材の育成に取り組むこと。

○ 評価における指標

教育研修事業に関する評価について、以下の指標を設定する。

(ア)全ての病院で医師・看護師を含む3職種以上が医療安全管理者養成研修を受講することとする。

(イ)毎年度、特定行為研修修了者の配置者数を前年度より増加させるとともに、特定行為研修修了者の配置者数に対する特定行為を実施する者の割合を50%以上とする。

(ウ)地域の医療・介護従事者への教育・研修の実施回数(JCHOの職員が地域の医療・介護従事者に対して講演や研修等を行った回数。オンラインでの実施を含む。)を毎年度650回以上とする。

【指標設定及び指標水準の考え方】

(ア)医療安全管理者は、組織をふかんし安全管理に関する体制構築に向けて組織横断的に活動しているが、担当者としての役割が大きく、複数職種での人材育成が望ましいことから、医師・看護師を含む3職種以上の医療安全管理者養成研修の受講を教育研修事業の実績を測る指標として設定する。

目標水準については、医療安全体制の構築による医療安全の推進のため全病院とする。(実績値:令和4年度14病院)

(イ)特定行為研修修了者が活躍し、地域医療に貢献するためには、配置者数を増加させることに加え、その専門性にあった業務が実施できる体制整備が必要であることから、特定行為研修修了者の配置者数及び特定行為を実施する者の割合を教育研修事業の実績を測る指標として設定する。

目標水準については、毎年度、特定行為研修修了者の配置者数を前年度より増加するように設定する。(特定行為研修修了者:令和元年度から令和4年度までの合計286人、特定行為研修修了者配置者数:令和4年度末時点266人)

また、特定行為研修修了者の配置者数に対する特定行為を実施する者の割合について、2022年度(令和4年度)の実績値以上の水準を設定する。(実績値:令和4年度末122人(45.9%))

(ウ)地域の医療・介護の質の向上のためには、研修や公開講座等の定期的な実施が重要であるため、地域の医療・介護従事者への教育・研修の実施回数を教育研修事業の実績を測る指標として設定する。

目標水準については、JCHO病院のうち、特に地域の医療・介護従事者への教育・研修を行うことが求められる地域医療支援病院(22病院)が月に2回、その他の病院が年に3回実施すると想定して水準を設定する。(22病院×24回+35病院×3回で年間633回を超える目標回数を設定)(実績値:令和元年度860回、令和2年度306回、令和3年度686回、令和4年度681回)

第4 業務運営の効率化に関する事項

通則法第29条第2項第3号の業務運営の効率化に関する事項は、次のとおりとする。

1 効率的な業務運営体制の推進

法人全体として経営の健全性を確保していくため、本部機能の見直しなど、理事長がリーダーシップを発揮できるよう、理事長を中心としたマネジメント体制を構築すること。

(1)組織

JCHOが果たすべき役割を確実に実施し、本部と病院、それぞれが求められる役割を適切に果たせるよう、国の医療政策や介護政策等に合わせた柔軟な組織・業務の見直し等に取り組むこと。

各病院がそれぞれの地域のニーズを踏まえ、限られた医療資源を最大限に活用しつつ、果たすべき役割を確実に実施できるよう、各病院単位だけでなく法人全体や地域においても、各地域で必要な医療の提供に向けたマネジメント体制や効率的なネットワークの構築等に取り組むこと。

また、2025年(令和7年)に向けた地域医療構想だけでなく、ポスト地域医療構想や今後の幅広い介護需要の増加を見据え、地域医療・介護の担い手として、地域のニーズの変化に柔軟に対応できるよう努めること。

職員配置については、各病院における地域事情や特性を考慮するとともに、地域における医療需要を踏まえて、業務量の変化に柔軟に対応できるよう、適宜見直しを図りながら、JCHOのネットワークも活用し、医師・看護師等の人材を確保し、適正な職員配置に取り組むこと。

労働生産性の向上を図るため、勤務環境の整備及び職員の能力・資質向上に取り組むこと。

(2)業績等の評価

組織目標の効率的かつ効果的な達成と職員の意欲の向上に資するよう、適切な業績評価を実施すること。

(3)情報システム整備及び管理

電子処方箋をはじめ、「医療DXの推進に関する工程表」(令和5年6月2日医療DX推進本部)に基づき政府が進める医療DXの各取組に率先して取り組むことにより、業務の効率化、質の高い医療サービスの提供や新たな医療ニーズへの対応等を実現するための基盤整備を進めること。

また、情報システムについては、デジタル庁が策定した「情報システムの整備及び管理の基本的な方針」(令和3年1224日デジタル大臣決定)にのっとり、PMOの設置等の体制整備を行うとともに、地域連携を進めるための情報システムの適切な整備及び管理を行うこと。

2 業務運営の見直しや効率化による収支改善

各病院の特性を生かした良質な医療の提供を図るとともに、適正な職員配置、後発医薬品の採用促進等の業務運営の見直しを通し、診療収入等の増収及び経費節減を図り、各病院の収支改善に取り組み、財政的に自立した運営をすること。あわせて、経営状態に応じた適切な投資を促進し、より各病院の特性や医療資源を活用できる環境整備を行うことにより、更なる経営基盤の強化に取り組むこと。

(1)収入の確保

医療資源の有効活用を推進するとともに、診療報酬や介護報酬の確保等収益性の向上に努めること。

また、適切な債権管理及び定期的な督促の実施による時効の中断を行うこと等により、医業未収金の発生防止や徴収の改善を図ること。

(2)適正な人員配置に係る方針

適正な人員配置に努めるとともに、通則法に沿った給与水準とすること。

(3)材料費

同種同効果医薬品の整理、共同調達等の調達方法及び市場における平均価格より高額で購入している場合の見直しを行い、業務収益に対する医薬品費などの材料費の比率(材料費率)の低減を図ること。

(4)投資の効率化

病院機能の維持及び改善に必要な建物、医療機器及びITに要する投資を効率的・効果的に行うこと。

(5)調達等の合理化

公正かつ透明な調達手続による適切で、迅速かつ効果的な調達を実現する観点から、「独立行政法人地域医療機能推進機構調達等合理化計画」に基づく取組を着実に実施すること。

(6)一般管理費の節減

一般管理費(人件費、公租公課、病院支援業務経費及び特殊要因経費を除く。)については、引き続き効率的な執行に努めること。

第5 財務内容の改善に関する事項

通則法第29条第2項第4号の財務内容の改善に関する事項は、次のとおりとする。

1 経営の改善

各病院の収支改善に取り組み、財政的に自立した運営の下、健全な経営を行うこと。

また、経常収支率が100%未満となるなど、経営等に課題のある病院に対して、本部が必要に応じて支援を行うこと。

○ 評価における指標

経営の改善に関する評価について、以下の指標を設定する。

中期目標期間の各年度の損益計算において、JCHO全体として経常収支率(経常収益÷経常費用×100)を前年度より上回ることとする。ただし、前年度の経常収支率が100%以上であった場合には、100%以上の経常収支率とする。

※ 令和5年度の新型コロナ感染症への対応に関連した補助金等を除く。

【指標設定及び指標水準の考え方】

JCHOは、他の独立行政法人以上に財政的に自立した経営が求められるため経常収支率を経営改善の実績を測る指標として設定する。

目標水準については、効率的かつ財政的に自立した運営を実施するためには、黒字経営することが重要であるが、電力、ガス等をはじめとする水道光熱費の増加等の厳しい経営環境等を踏まえ、毎年度、経常収支率を前年度以上とすることを水準として設定する。ただし、前年度の経常収支率が100%以上の場合には、100%以上を維持することとする。(実績値:令和元年度101.1%、令和2年度105.7%、令和3年度112.4%、令和4年度105.6%)

【困難度:高】

電力、ガス等をはじめとした水道光熱費及び物価上昇等に伴う賃金上昇による人件費の増加並びに新型コロナ感染症に伴う受療行動の変化等による厳しい経営環境に加え、医師をはじめとする職員の働き方改革が求められている状況で、診療報酬や介護報酬の改定に対応しながら、毎年度、経常収支率を前年度以上とし、また、前年度の経常収支率が100%以上となった場合にその状態を維持し続けることは相当な経営努力を必要とすることであり、困難度が高い。

なお、評価に際しては、上記のようなJCHOを取り巻く環境の変化が経営に与えた影響やそれに対する経営改善の取組及び改善状況を把握し、考慮するよう努めるものとする。

2 長期借入金の償還確実性の確保

 病院建物、大型医療機器や医療DXの投資に当たっては、長期借入金の償還確実性を確保すること。

第6 その他業務運営に関する重要事項

通則法第29条第2項第5号のその他業務運営に関する重要事項は、次のとおりとする。

1 人事に関する事項

良質な医療及び介護を効果的・効率的に提供していくため、医師、看護師、介護福祉士等の人材確保・育成については、計画的に取り組むこと。

また、働き方改革を実現するため、職員全体の勤務環境の改善に取り組むこと。特に医師の勤務負担の軽減や労働時間短縮のため、タスク・シフト/シェアの推進等の国の方針に基づいた取組を着実に実施すること。

2 内部統制の充実・強化等

内部統制の更なる充実・強化を図るため、内部監査のほか、各病院におけるリスク管理の取組を推進するとともに、情報セキュリティ監査体制の充実・強化に取り組むこと。

3 情報セキュリティ対策の強化

地域の医療機能の向上及びJCHOの業務最適化の観点並びに「政府機関等のサイバーセキュリティ対策のための統一基準群」を踏まえ、情報セキュリティポリシー等関係規程類を適時適切に見直すとともに適切な情報セキュリティ対策を講じることにより、診療機能に影響が及ばないよう情報システムに対するサイバー攻撃への防御力及び組織的対応能力の強化に取り組むこと。

また、情報セキュリティ対策の強化に関し、情報セキュリティ研修及び伝達研修を毎年度実施し、標的型攻撃メール訓練も併せて実施すること。

さらに、本部及び各病院を対象とした情報セキュリティ監査を継続的に実施し、指摘が多い施設についてはフォローアップを行うこと。

4 広報に関する事項

本部や病院のホームぺージ、SNS等を活用し、JCHOの役割、各病院の取組等について積極的な広報活動に努めること。

 

 

5 病院等の譲渡

 JCHOは、独立行政法人地域医療機能推進機構法(平成17年法律第71号)第14条の規定を踏まえた適切な対応を行うこと。

6 その他

既往の閣議決定等に示された政府方針に基づく取組について、着実に実施すること。