居宅介護支援センターの効果的な活用(JCHOニュース2017夏号特集)

JCHOグループでは、現在29施設の居宅介護支援センターを運営しています。今号では、特定事業所加算の算定や在宅強化型介護老人保健施設の取得についての取り組みをご紹介します。

目次

地域の介護支援専門員への研修やネットワーク構築
 南海医療センター附属居宅介護支援センター 主任介護支援専門員 國部 昭夫

特定事業所加算Ⅱ・社会参加支援加算の算定
 うつのみや病院附属居宅介護支援センター 介護支援専門員 稲場 陵一

居宅介護支援センターの活用した在宅強化型介護老人保健施設の取得
 神戸中央病院附属介護老人保健施設 副施設長 井下 訓見



地域の介護支援専門員への研修やネットワーク構築

南海医療センター附属居宅介護支援センター 主任介護支援専門員 國部 昭夫

南海医療センター附属居宅介護支援センター集合写真  佐伯市は九州一の面積をもつ市町村で、人口7万4千人に対して高齢化率は37%と国の平均より早いスピードで高齢化が進んでいます。このような状況の中、実情に合った地域包括ケアシステムの構築を目指すため、在宅医療・介護連携、認知症施策などが急ピッチで進められています。当センターとしても地域包括ケアを意識した支援を心がけ、事業所全体の質を高めるためにも平成27年9月より特定事業所加算Ⅲを取得しました。そこで今回は当センターの特定事業所としての取り組みを紹介させて頂きます。
 特定事業所とは医療依存度の高い方や重度の認知症がある方など、いわゆる困難事例に対応できる質の高い事業所として位置づけられ、取得するには主任介護支援専門員の配置や特定事業所集中減算に該当しないなど、要件や人員基準を満たす必要があります。
 実際の相談は、自院の退院支援や地域包括支援センターからの依頼が主で、困難事例に対する介護支援専門員の役割としては、緊急時対応も想定した在宅支援チームを作ることが大切です。これらの対応力は知識や経験から培われることから、当センターでは年間研修計画に沿ってスタッフの知識向上を図ると共に、毎月1回の事例検討会を行い、解決策の検討と事例の共有化を図ることで、事業所全体の経験値を高めることに努めています。そして、利用者と地域との繋がりを大切にし、日常生活圏域での包括的な支援を行うため、ケアプランに位置づけるサービスが特定の事業所に偏ることがないよう公正中立で効率的・効果的な支援を心がけています。南海医療センター附属居宅介護支援センター意見交換会の様子また、特定事業所の主任介護支援専門員としては、今年度より介護支援専門員の実務研修実習を受け入れて実習指導を行ったり、市内の特定事業所の主任介護支援専門員を集めて意見交換会を開くなど、地域の介護支援専門員の指導的役割や、他事業所とのネットワーク構築に努めています。
 特定事業所加算を取得することは多くの要件を満たす必要がありますが、加算の算定だけでなく質の高い支援を行える事業所として地域の信頼を得ることができます。今後も特定事業所としての役割を果たし、JCHOの理念に基づいた運営を行っていきます。


特定事業所加算Ⅱ・社会参加支援加算の算定

うつのみや病院附属居宅介護支援センター 介護支援専門員 稲場 陵一

 当センターの位置する宇都宮市雀宮地区の65歳以上の高齢化率は、平成29年3月末で26%です。また、4人に1人が75歳以上という超高齢社会が到来する2025年を前にし、地域住民が住み慣れた地元で、安心して暮らしたいとのニーズがますます高まっています。居宅介護支援センターの介護支援専門員は、利用者様(要支援・要介護者)の状態を把握しながら自立支援に向けたプランを作成、介護保険制度を運営する要としての役割を担っています。独居、夫婦のみの世帯の増加、認知症や医療依存度の高い方などの在宅生活を支えるため、居宅サービス支援(居宅介護支援事業者)の質の向上が求められています。
うつのみや病院附属居宅介護支援センターの集合写真 当センターは、平成11年10月に居宅介護支援事業所サンビュー宇都宮として介護老人保健施設内に開設。平成18年4月に開設した地域包括支援センター雀宮に隣接しているため、病院の入退院・老健の入退所・在宅での支援の連携が取りやすい環境にあります。当センターの介護支援専門員(ケアマネ)4名は、他の資格として看護師(2名)・社会福祉士(1名)を持ち、利用者様の様々なニーズに応えられるように活動しています。介護支援専門員資格取得をした職員の配置換えにより、平成27年10月からケアマネが3人から4人になり、JCHO病院で初めて特定事業所加算Ⅱを取得しました。特定事業所加算Ⅱの算定要件は、①集中減算(1つのサービス事業所に8割を超えないこと)、②居宅会議の開催や個人での研修会(院内の研修や地域包括支援センター雀宮の主催の研修会)参加、③人員の基準を遵守、④平均担当件数の制限、⑤地域包括支援センターからの困難事例の対応、⑥ケアマネの実務研修の受け入れなどです。特定事業所加算Ⅱを取得したことで、平成28年度は取扱件数も増加し前年度比で593万円の増収となりました。(図1)うつのみや病院附属居宅介護支援センター平成27年4月から平成29年4月までの居宅介護支援介護料の推移
 さらに、通所リハビリテーションのスタッフ・関係各機関・家族と連携して、自立に向けた生活リハビリ・就労支援に取り組み、当センター利用者を社会復帰に繋げることができました。同様に、老健のリハビリテーション会議の参加や平成29年度からの「社会参加支援加算」の算定にも貢献することができました。
 今後とも、JCHOが掲げる理念に基づき、介護支援専門員としての資質の向上に努めるとともに、地域包括ケアシステムの構築の一員として関係機関との連携を図り、地域の高齢者(要介護者)が安心して過ごしていけるように、より良い支援が出来るようにしていきたいと思います。


居宅介護支援センターの活用した在宅強化型介護老人保健施設の取得

神戸中央病院附属介護老人保健施設 副施設長 井下 訓見

 平成27年度の介護報酬改定により介護老人保健施設(以後老健)は、さらに在宅復帰支援が強化されました。区内の高齢化率が30%越えとはいえ9施設ある老健のうち在宅復帰を実施している施設が7施設あるため、当施設での長期入所を希望される現状がありました。今回当施設が在宅強化型を取得するまでの在宅復帰支援について紹介します。
神戸中央病院附属介護老人保健施設在宅復帰支援パスの図 昨年1月JCHO本部において老健管理者会議が開催され、26施設ある老健の在宅復帰や看取りについての施設報告がありました。そこで当施設の課題が①在宅復帰支援パスの活用 ②入所退所訪問の実施 ③タイプ分けベッドコントロール等④附属居宅介護支援センターとの連携(以下居宅)であることがわかりました。①③は作成により取り組むことができましたが、②については人的にも時間的にも困難な状況でした。そこで介護業務との兼務を行っている老健ケアマネジャーの勤務調整を行い、平日は老健のケアマネジャー業務に専念してもらいました。入所契約時には他職種が利用者家族と入所前面談を行い、ケア目標を設定した上で入所後にリハビリを見学してもらいました。目標評価では定期的にサービス担当者会議(各々の専門職の立場から意見を述べ利用者のサービスを検討する会議)へ、利用者とともに家族にも参加してもらうことができるようになりました。これまでの経過でほぼ在宅復帰は可能となりました。ちょうど昨年4月には介護支援ソフトのバージョンアップが行われ、アセスメントツールであるR4の導入と電子カルテ化による他職種との情報共有が可能となったこともこれらの実現に助けとなりました。
 しかし、入所が長期化している利用者の場合はそう上手くいかず、サービス担当者会議に参加していただくまでに時間を要しました。老健の支援相談員と居宅のケアマネジャーとの協働作業で参加を呼び掛け会議の趣旨を伝えました。毎回の会議では老健の役割である在宅復帰について説明をした上で、利用者の在宅復帰を行う上での課題や対応策を検討しました。④については居宅の担当介護支援専門員と連携し、老健職員と退所前訪問指導を利用者と共に自宅へ伺い他職種で課題を検討し、在宅に戻るためのケアやリハビリが変更されます。家族からは数年ぶりに家に帰った利用者の喜ぶ顔を見て、少しでも家に連れて帰ろうかと思えましたと気持ちが変化していきます。在宅復帰支援として居宅に協力を依頼し、通所リハビリテーションや短期入所療養介護も利用していただきます。電子カルテ化により事業が変わっても情報は的確に共有できます。神戸中央病院附属介護老人保健施設平成28年4月から平成29年4月までの在宅復帰率の動向
 その結果今年5月より、在宅強化型(現在60%)を取得することができました。今後の課題は、栄養や健康管理が整いリハビリ効果が上がる体制作り、事業所や住民との地域連携等多くありますが、高齢者が住み慣れた地域で生活ができるよう「時々入院、ほぼ在宅」と同じく「時々老健、ほぼ自宅」を目指し、他職種連携・チームケアを強めていきたいと考えています。





特定事業所加算Ⅱ 特定事業所加算Ⅲ 在宅強化型
1 常勤の主任介護支援専門員等を1名以上配置。
※ただし、業務に支障がなければ、同一敷地内の他の事業所の職務と兼務可。
※等とは、年度中に主任介護支援専門員研修を終了する見込みがある者。
在宅復帰率が50%を超えていること。
2 常勤専従の介護支援専門員を3名以上配置。
(当該事業所の管理者との兼務可)
常勤専従の介護支援専門員を2名以上配置。
(当該事業所の管理者との兼務可)
ベットの回転率が10%以上であること。
3 利用者の情報や留意事項などの伝達を目的とした会議を定期的に開催。(週1回以上) 要介護度4または要介護度5の利用者が35%以上であること。
4 24時間連絡体制を確保し、必要に応じて利用者等からの相談に対応できること。
5 介護支援専門員に対し、計画的に研修を実施。(年間の個別研修計画を作成。研修目標の達成状況を適宜評価・改善措置の実施)
6 地域包括支援センターと連携を図り、みずから積極的に支援困難事例にも対応可能な体制を整備。
7 運営基準減算・特定事業所集中減算の適用を受けていないこと。
8 介護支援専門員1人(常勤換算)の利用者数(介護予防含む)が40名未満。
9 法第六十九条の二第一項に規定する介護支援専門員実務研修における科目「ケアマネジメントの基礎技術に関する実習」等に協力又は協力体制を確保していること。

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